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2009年2月 「雨乞い」

なんと今年のベイエリアの冬は天気がいいのだろう。暖かく快晴の日が本当に多い。爽やかな朝日の中を通勤しているとアメリカの半分以上の人は極寒の中で大変な思いをしているのに、こんなに天気が良くていいのだろうか?と申し訳ないような気持ちさえするのだ。だが、いい天気に浮かれてばかりはいられない。昨年も降雨量が少なかったカリフォルニアは、今年雨がかなりたくさん降らないと大変マズイ状況に追い込まれるのである。

かつて私がボストンからカリフォルニアに移ってきたときに感じたことで印象的なことがいくつかあった。最初に思ったのは、お店の店員さんが明るくフレンドリーなことだった。ボストンにいるときは、どちらが客だか分からないような横柄な対応を受けることが多かった。高級なお店では、もちろん対応も良いのだろうが、貧乏学生が行くような店では「何が欲しいんだ?」という感じで、一体どちらが客だか分からないほどであった。あのいつも笑顔だった三波春夫さんが聞いたら怒り出しそうな、客を客とも思わぬような傲慢な接客態度だ。ところが私は4年間のボストン生活で、すっかりそれに慣れてしまっていた。それに比べてロスの店員は明るく親切な人が多くて、馬鹿な私が「この娘は自分に気があるのではないか、どうしよう」と勝手に勘違いして一人で頬を赤らめ照れてしまう程だった。

次に感じたことは白人の割合が少なく、普通のスーパーでもアジア食品やメキシコ食品のコーナーがあることに驚いた。ここはアメリカなのかと疑いたくなった。だけどバーモントカレーが簡単に手に入るのでとても嬉しかった。アメリカは人種のるつぼだというが、本当にロサンジェルスに来たときはそう思ったのだった。

そして、最も驚いたのは雨がまったくと言っていいほど降らないことだった。毎日晴れていて、カリフォルニアはやっぱり天気がいいんだな~とヘラヘラと脳天気に喜んでいた。しばらくして分かったことだが、その年は記録的な少雨だったのだ。やがてテレビやラジオでも節水の呼びかけのコマーシャルが増えてきて、北カリフォルニアと、そこから水を供給してもらっている南カリフォルニアとの間に確執のようなものさえ生まれていた。北は何で南に水をあげなければいけないんだという世論もあり、そのうち水をめぐり南北で州が二分割されてしまうのではないかなんて話をする人もいた。

古代から渇水というものは、人類にとって死活問題であった。その為に貯水や用水の技術は飛躍的に進歩したのだ。今では砂漠が人工的に緑豊かな街になる時代だ。作物も人間も水なしでは生きていけない。作物が獲れなければ飢饉になる。人間の体の7-8割は水分だから水を飲めないと死んでしまう。食べ物がなくても水さえあればしばらくは生きていけるが、水がなくなれば人間は長くは生きていられないのだ。そんな大切な水を確保できなければ大変なことなので、この少雨暖冬を喜んでばかりはいられないということだ。

健康にとって水がどれほど大切かは、今更私が説かなくても皆さんよくご存知のはずだ。しかし、知っているのと健康的な水分摂取を実行しているかということは別物だ。分かっていてもできていない方が多いのだ。人間の体というものは細胞の集まりだ。その細胞一個一個を満たしているのが水分なのだ。その細胞を満たす水分が十分でなくて細胞がしおれていたり、細胞を満たす水が汚れたりしていれば細胞の機能が低下する。それ故に体の抵抗力も低下し、細胞も病気になりやすくなる。私が患者さんによく言うことがある。生物の授業で見た細胞のイラストを思い浮かべたとき、あなたなら自分の体の細胞をどのように水分で満たしたいですか?と訊ねるのだ。水分が足りなくてしぼんでいたり、汚れた水分でよどんでいたりするより、フレッシュな水分ではち切れんばかりに満たされてプルンプルンになっている細胞のほうがいいと思うに決まっている。そのような細胞は免疫力もあり病気になりにくいのだ。健康の基礎は健康な細胞。それはフレッシュな水を十分に摂取することから始まるのだ。

風邪を引く人の多くが脱水症状である。水分が足りていなくて抵抗力が低下して風邪をもらう。特に子供は注意していないと水分を十分に摂れないものだ。子供たちには最低でも三食のときに大きなグラス一杯の水を飲ませるようにしたい。学校にも必ず水を持たせて一日一本空にするように指導したい。耳寄りな情報は、水はダイエットにも良いということだ。ダイエット、この魔法の五文字を目にして女性読者の関心がググッと高まったことだろう。我々が日常に感じる空腹感は実は脱水状態によるものが多いということだ。だから小腹が空いたなと思ったら、お菓子を食べずに、まずはグラス一杯の水を飲んでみると水で胃が満たされるし、脱水状態も解消されるので空腹感を解消できる場合が多いのだ。食事と一緒に水をたくさん飲むと食べすぎも防止できる。胃の中で食物も水分を吸収するので便秘にもいいだろう。

腰痛や肩こりなどに苦しむ方にも当然水分補給が大切になる。痛みが出る場合は組織に炎症を起こしていることが多い。炎症を回復させるためには新しい水分を組織に送り込み汚れた水分であるリンパや白血球、乳酸を取り除くことが必要なのだ。筋肉の細胞も水分で満たされている。強い筋肉、柔軟性のある筋肉のためにも水分は重要だ。傷んだ体の組織の回復にも水分はとても大切なものなのだ。私は普段から患者さんに一日最低2リットルの水を飲むようにと伝えている。それもなるべく室温で、お茶やジュースではなく水を飲んで欲しい。ビールは水分だから水だろうと持論を展開し一日2リットルのノルマの中に計上するお得な人がいるが、逆に酒、タバコ、カフェインを摂取する人は水の摂取もその分増やして毒素を体から排出しなきゃいけないのだ。お酒を飲めば自然と体が水を欲するものだ。ノドが乾いたと思ったらすでに脱水状態だということを肝に銘じて、こまめに水を飲む習慣をつけてほしいと思う。水は我々の健康に取ってはかけがえのない大切なものなのだ。

このコラムが読者の目に触れる頃は天気予報だと雨である。しかし、油断は出来ない。先週も雨マークが気づいたらいつの間にか晴れマークに変わっていた。雨は夜中に降って朝には晴れて欲しい、週末には降らないで欲しいなどという贅沢はもう言っていられない。これ以上晴天が続くようだと、天に向かって皆で雨乞いをしなくてはならない。地球も生物も我々の心と体にも、森羅万象に潤いは必要なのである。

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