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2007年9月 「痺れる」

ようやく長い夏休みが終わり、子供たちが学校へ行って自由な一人の時間を取り戻してホッとしているお母さんも多いだろう。毎年この時期になると思うのだが、長すぎると思っていた夏休みが終わると瞬く間に時間は過ぎていく。気づいた時にはもうクリスマスでサンタのプレゼントで奔走することになる。そうやってまた一年が過ぎて行き、歳をとってしまう。それだけに長すぎると感じる夏こそを充実させて過ごさないともったいないことになるのだ。

 今年の我が家の夏は、初めて日本に帰らずアメリカで過ごす夏となった。今まで子供たちに日本の教育を体験させることを優先させて、夏休みに入るとすぐに日本へ行き、体験入学をさせて夏休みの大半を日本で過ごしていたのだ。そのためスポーツなどが一番上達する夏休みの集中キャンプや大会への参加をあきらめてきた。そろそろ子供たちも成長してきたので、暑い日本でダラダラ夏休みを過ごすよりアメリカで思いっきりスポーツをさせてみようということになった。息子は野球のリトルリーグ最後の年で幸運にも街の代表としてオールスター・トーナメントとニューヨークのクーパーズタウンで行われる大会などに参加することが出来た。娘はバレエをやっていて、ようやくバレエらしいダンスが踊れる歳になったこともあってラスベガスで行われた大きな大会に出場した。

子供の親になるということは良い事ばかりでなく、犠牲にすることも多いし経済的負担も大きい、そして日々の精神的、肉体的疲労は想像を絶するものだ。時には子供のいなかった自由な夫婦二人の生活を懐かしく思うこともある。毎日、毎日、親の言うことを聞かない自分勝手な子供たちと過ごすことは本当に大変だ。その代償のひとつとして稀にスポーツで活躍したり、勉強で良い成績をとってくると親というものは嬉しいものだ。我が家の子供たちはよそ様のお子さんに比べると親を怒らすことは多くても喜ばすことは極端に少ないとは思うが、それはDNAが粗末なせいもあるのであまり贅沢はいえない。

この夏に賭けた親の熱い思いが神様に届いたのか、娘はその大会で実力以上の賞をいただき、同伴していた家内は思わず涙が出てしまったそうだ。毎日のようにレッスンの送り迎えをし、集中力のない年頃の娘を叱咤激励してきた甲斐があったのだろう。我が家は、娘にそれほど厳しく練習させたりはしないものの、やはりそれなりの苦労があったのだ。

そして、その一週間後にニューヨークに旅立った私と息子もとてもエキサイティングで楽しい一週間をすごすことができたのだ。それまで、リーグチャンピオンシップあたりから調子を落としていた息子はオールスターのトーナメントではついに絶不調を極め、途中で降ろされる試合が続き、親としても何のために応援に行っているかわからない状態だった。ところが、痛い肩を無理してバッティング練習に付き合った甲斐があり、ニューヨークに発つ一週間前から息子は急に当たりを取り戻したのだった。お陰で、ニューヨークの大会では絶好調で十分に活躍し、チームも予想以上の健闘をし、息子本人も大満足の大会となった。私も息子が打つ打球を目で追い、興奮して大声で応援し、ベース上でガッツポーズをする息子を久しぶりに手放しで褒めてやりたいと思った。

我が家の親不孝な子供たちにしては珍しく大きなプレゼントをしてくれた夏だった。親というものは馬鹿なもので、自分たちのことは棚に上げて子供には過大な期待をするものだ。たまに子供たちが活躍すると我が家では滅多にないことなので私たち夫婦はどこまでも舞い上がってしまうのだ。まさに「痺れる」思いをするのだ。嬉しそうにダイヤモンドを駆ける息子の姿、そしてチームの勝利に「シビレル~」と思わず言ってしまった。この痺れるという感覚は何だろう。電流が身体を駆け巡る痺れなのか、興奮でぼうっとしてしまう痺れなのだろうか。

そんなどうでもいいようなことを考えていたら、どんどん気になり始めた。私の世代では女の子がテレビの中の西城秀樹を見て「ヒデキ素敵、シビレちゃう~」なんて身をよじっていたものだが、最近の子は果たしてそんなことを言うのだろうか。この場合は、電流系のシビレか興奮系でぼうっとする痺れのどっちなのだろう。どちらでも気を失いそうだが、あの頃コンサートなどでアイドルをナマで見て卒倒していた女子はどっちの痺れを感じていたのだろう。私が小学生の頃、よく先生に叱られ正座をさせられて足が痺れる感覚とは違うことは確かだ。あの痺れは理不尽に痛かった。

なぜ私がそんなに痺れにこだわるかというと、職業柄、私は痺れるという表現を頻繁に耳にしているからだ。患者さんが訴える症状で痺れというものは非常に多い。ところがこの痺れが実に手強いことが多いのだ。専門家の方は皆さんきっと同じことを言うと思うが、痛みより痺れのほうが回復に時間がかかる場合が多いのだ。腰痛や首痛の場合、どんなに痛みが強くても手足に痺れが出ていない場合は比較的回復が早い。一番厄介なのが首や腰に痛みはそれほど感じられないのに手足に痛みに似た痺れが強い場合だ。これはかなり神経の繊維自体がダメージを受けているので神経が補修回復するのに結構時間を要するので患者さんもフラストレーションや不安を感じるケースが多い。

私が痺れにこだわっていたせいか、最近は首や背中から腕への痺れで来院される患者さんが非常に多い。本当に多いのだ。不思議なことにクリニックでは、常に傾向というものがあり、交通事故の患者さんが続いたり、ぎっくり腰が続いたり、肩の患者、足首の捻挫の患者など、同じ症状の患者が続くことが多いのだ。それにしても今回の腕への痺れは今までに類を見ないほど多さだ。これもコンピュータ社会の副産物かもしれない。

首や肩甲骨の痛みやコリとともに腕に痛みに近い痺れを感じる原因は大きく分けて三種類がある。一番多いのは頚椎下部から胸椎の上部、分かりやすくいえば首と背中の境目近辺での椎間板ヘルニアなどの椎間板の腫れや逆に椎間板や頚椎が老化変形を起こす背骨の問題によるものだ。首を大きく動かしたりすると腕や背中に痛みが流れる時は、その可能性が高い。次は肩甲骨の周りの筋肉の極度のコリや肉離れによるもので、腕の置き場がないと表現される方に多いものだ。もうひとつは胸郭出口症候群といって鎖骨周辺で腕への神経が圧迫を受けることによるものだ。どれも症状は酷似しているので常にこの三つを頭に入れて治療していくことになる。とても辛い症状であるが、ちゃんと治療していれば快方に向かうものだ。どれだけの期間症状があるかや原因の種類によって回復する時間に差があるのは当然だが、一番大切なのは原因を作った生活習慣を正すことだ。姿勢が悪い事とコンピュータなどの長時間の継続的手作業が原因となっている場合が殆どだ。

このような症状でお困りの方は放置しておいても決してよくならない生活習慣病なので早めに治療を受けることと、生活習慣や労働習慣の工夫や適切な運動で対策をとる必要がある。時間がたつと徐々に神経が弱くなっていき、更に回復に時間がかかるようになるのだ。世の中には様々な痺れが存在する。どうせ痺れるのならこのような辛い痺れでなく、喜びや感動で気持ちよく痺れたいものだ。

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