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2007年4月 「クーパーズタウン」

4月を迎え、メジャーリーグも開幕し、日本選手の活躍が気になる毎日を過ごしているのは私だけではないだろう。私がスポーツ好きなのは有名だが、やはり子供の頃に王、長島を見て育った世代だけに野球には特別な思い入れがある。小学生のころは毎日野球ばかりして勉強など殆どしなかったものだ。雨が降っても暗くなっても野球がしたくて出来る場所を見つけてはキャッチボールをしたり、素振りをしたりしていた。学校でも掃除の時間はほうきがバットになり、雑巾が丸められてボールに早代わりしていた。清掃委員の女子に睨まれてもへっちゃらで、野球の魅力の前には何も怖いものは無かった。一度など打った雑巾が勢いよく教室の窓から廊下へと飛んでいき、見回りをしていた校長先生を直撃して身が縮まる思いをしたが幸運にも優しい校長先生だったのか、たまたま機嫌が良かったのか大して叱られずに済んだ。ボールで割ったガラスの枚数は数え切れないほどだ。球状のものは何でもすぐにボールに、そして棒状のものはバットに早代わりするのだった。本当に野球が楽しくて楽しくてしょうがなかった。初めて買ってもらったキャッチャーミットの革の匂いは今も忘れない。あまりに嬉しくて抱いて寝たものだった。そんな野球少年だった私にとって入学した中学に野球部が無かったことは大きなショックだった。そこから私の人生は狂い始めたのではないだろうかと勝手に思ったりもしている。もし中学に野球部があったらプロ野球選手になっていたはずだった。そして、野茂選手より先にメジャーリーグで活躍していたはずだった。と私が酔っ払って言っても、誰も真剣に聞いてくれないのだ。無視されて自棄になった私の大それた妄想は更に膨らみ、本当ならメジャーリーグでも大活躍して殿堂入り出来たかもしれないのにと悔しくなるのだ。

男というものは自分が果せなかった夢は息子に託すものだと相場が決まっている。巨人の星の星一徹がそうだ。巨人の星は、私の世代の野球好きにとってはプロ野球選手を育てるバイブルのようなもので、その夢をかなえるためには大リーグボール養成ギブスは必須アイテムだと信じていた。残念ながら私の父は忙しすぎたせいもあるし手先がそれほど器用でもなかったのか、あのバネが一杯ついた野球少年憧れのギブスを私のために作ってくれることはおろかキャッチボールすらろくにしてもらった記憶が無い。当然、私はその夢を息子に託すわけだ。幸い私の息子も野球好きで夢はプロ野球選手だといっている。しかし、最近は現実が少し分かる年頃になって他の道も考えているようだが、そうは問屋が卸さない。私の父親としての夢をないがしろにしてもらっては困るのだ。私は時間があれば息子のキャッチボールの相手をしたり、素振りでスイングをチェックしたり、バッティングセンターに連れて行ったりして一生懸命指導している。時間に余裕があるときなどはグラウンドで情け容赦ないノックの雨を降らせてやったりもする。息子は私が子供の頃より体も大きく足も速くて、とても器用なのだが、打撃センスと球扱いの上手さは私のほうが上だったと思う。やはりアメリカでは学校で掃除の時間が無いので雑巾野球で打撃センスを磨く機会がないせいだろうかと思っている。球扱いが今一歩なのは家内が家の中でのボールを禁止しているせいかも知れない。お陰で我が家では窓ガラスが一度も割られたことが無い。だけど、そんなハンディを克服してこそプロ野球選手への道は開けるのだ。

私にしても星一徹のように怒って卓袱台をひっくり返すほどの熱血ではないし、今一歩徹し切れていないのも事実だ。私ぐらいの父親はそこらにごろごろといる。プロ野球選手を育てる為にはもっと一徹にならないとだめなのだろう。仕事が忙しくなかなか思うように練習に付き合えないのが残念だ。息子の友達も野球をする子は少なく練習相手が少ない。近所では、どちらかというとテニスの方が主流になっている。我が家のように巨人の星派よりテニスの王子様派の方が多いということだ。テニスも面白いスポーツだが、私にとってはどうしてもブルジョアのスポーツだという思いが潜在意識に植え込まれていて、自分のような庶民がするものではないと勝手に臆してしまうのだ。やっぱり我が家には野球のほうが似合っている。

巨人の星になりきれない情けない親子だが、町内のリトルリーグで選抜チームを夏にニューヨークのクーパーズタウンで毎年行われているリトルリーグのトーナメントに派遣するという話をきいて、息子のリトルリーグ最後の年でもあるので思い切ってチャレンジする事にした。クーパーズタウンというのは、野球好きなら誰でも知っている野球発祥の地、妄想の中の私が入るはずだった野球の殿堂があるアップステート・ニューヨークの小さな田舎町だ。本当に野球一色のような街でドリームパークと呼ばれるリトルリーグの野球施設は22面の野球場があり、夏の二ヶ月間に毎週96チームが一週間野球の試合漬けとなりチャンピオンを決める。そして、週間チャンピオンが最後に戦って最終的なチャンピオンを決めるのだ。総計で900以上のチームが出場するが、噂によるとウエイティング・リストに数百のチームが待っているという。中には大企業がスポンサーとなり各地から優秀な選手を集めたチームなどもあるが、殆どが町内のリトルリーグから選抜された我が町のチームなのだ。ここから未来のメジャーリガーが確実に生まれるのだ。

代表チームを決めるのにはもちろんトライアウトと呼ばれる選抜テストがある。4人の審査員がそれぞれの選手の内野守備、外野守備、打撃、走塁の4項目の総合点で判断し、上位13人が選ばれるのだ。親も緊張感いっぱいで固唾を呑んで見守っているようなテストだ。私も息子のトライアウトを見るためにフィールドに駆けつけた。緊張感漂う中、皆キャッチボールなどで黙々と準備運動をしていた。息子はどこかとその姿を探したが見当たらない。しかし、よく見るとそこでヘラヘラとだらしなく笑い、ふざけながらサッカーをして遊んでいる息子を見つけた。プロ野球どころか、クーパーズタウンまでもがスーっと遠ざかっていくのを感じた。クラクラする頭を整理し、大声で息子を呼びつけて喝を入れてやった。息子もことの重要さにようやく気づいたのか、さすがに真剣にプレーしていた。サッカーで程よく体がほぐれていたのか動きも良かった。どうにか、代表チームに選ばれて憧れのクーパーズタウンに行けることになったのだ。

折角クーパーズタウンに行けることになったのだから良いプレーをして思い出をたくさん作って欲しいと、メラメラと星親子の燃える瞳が乗り移ったように野球の指導にも一段と力が入ってきた。息子もやる気が増して、文句も言わず練習している。だが少し目を離すと毎日の日課の素振りもサボっていたりする。やはりベストを尽くしてプレーしないと本当の喜びや感動は味わえない。選ばれなかった子供たちの為にも一生懸命に頑張らなきゃいけないと息子に教えている。試合で一生懸命頑張った結果、エラーや三振をしてもそれはしょうがないことだ。プロでもエラーもすれば三振もする。大切なのはベストを尽くして練習し、一生懸命プレーすることだ。そうすれば結果はどうであれ、必ず最高の思い出になるはずだ。私も息子の為にできるだけ練習に付き合い、野球の話をたくさんして野球を理解し楽しんでもらうように頑張るつもりだ。

私のもう一つの仕事は息子を始めチームメイトの体調管理だ。私もチームと一緒にバンクハウスと呼ばれる決して快適とは呼べない宿舎に寝泊りする。大人にとってはかなり過酷な条件らしいが、息子たちの側にいて怪我をした選手の治療をして少しでも良い体調でプレーして欲しいからだ。私も息子たちのためにベストを尽くしたいのだ。幸いスポーツ傷害は私の得意分野でもある。普段からクリニックでスポーツによる怪我の治療をしているし、オリンピック選手たちの治療やスポーツイベントのメディカル・スタッフのボランティアなども慣れている。それにカイロプラクティックは怪我の治療だけではなく、背骨を整えることで神経の流れを活性化し体の機能を高めて運動能力を引き出せるのだ。だからアメリカではプロやオリンピックの選手の多くがカイロプラクティックを利用している。親子で一生懸命頑張ってチームのために最高のプレーができればいいと願っている。そして、チームメイトたちにもカイロプラクティックの素晴らしさを感じてもらえれば良いと願うのだ。

私を憧れのクーパーズタウンに連れて行ってくれる息子には感謝している。この夏は息子にとって一生の思い出となるだろう。親子で野球漬けの一週間を、それもクーパーズタウンで過ごせるなんて幸せなことだ。少々寝床がきつかろうが、バスルームが少々臭かろうが汚かろうが関係ない。野球トーナメントのあとのナイアガラ観光をどちらかというと楽しみにしているピントがずれた家内と娘もクーパーズタウンに行けばきっと感動を味わえるはずだ。最高の夏の思い出を作る為にも一生懸命練習してベストを尽くすことを息子に教え続けたい。そして、息子のプレーする姿をこの目に焼き付けて一生の思い出にしたい。試合結果は気にせず、一生懸命、そして楽しんでプレーしてもらいたい。私は父親としてカイロプラクターとして息子の最高のパートナーとなって応援してやりたいと思う。

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